個人事業主・小規模事業者もデジタル化・AI導入補助金は使える?対象条件と申請の進め方
公開日:2026年8月3日 更新日:2026年8月3日
「うちは法人じゃないから無理だろう」「従業員が数人しかいないから対象外では」——そんな理由でデジタル化・AI導入補助金をあきらめている個人事業主の方は少なくありません。結論から言うと、個人事業主も一人で営む整備工場も、要件を満たせば対象になります。しかも小規模事業者は補助率が優遇されるため、法人より有利になるケースすらあります。この記事では、個人事業主・小規模事業者の目線で対象条件と進め方を整理します。
- 個人事業主が対象になる条件
- 「小規模事業者」だと補助率が上がる仕組み
- 実際いくら補助されるのかの計算例
- 開業したばかりでも申請できるか
- 個人事業主に必要な書類
- つまずきやすいポイントとよくある質問
個人事業主は対象になる
デジタル化・AI導入補助金2026の対象は「中小企業・小規模事業者等」です。ここでいう中小企業には個人事業主も含まれます。法人格の有無は要件ではありません。
対象になるかどうかは、業種ごとに定められた資本金・従業員数の基準で判断されます。個人事業主には資本金がないため、実質的には常時使用する従業員の数で判断されることになります。自動車整備業・自動車小売業はサービス業・小売業の区分にあたり、多くの個人整備工場・個人経営の車販店が範囲に収まります。
「小規模事業者」に当たると補助率が上がる
ここが個人事業主にとって最大のメリットです。デジタル化・AI導入補助金では、小規模事業者に対して補助率が上乗せされます。
| 申請枠 | 中小企業 | 小規模事業者 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 1/2以内 | 2/3以内 |
| インボイス枠(対応類型) ※ソフト50万円以下の部分 |
3/4以内 | 4/5以内 |
| セキュリティ対策推進枠 | 1/2以内 | 2/3以内 |
小規模事業者の目安は商業・サービス業なら常時使用する従業員が5人以下、それ以外の業種なら20人以下です。整備士が数名という規模の工場や、一人で切り盛りしている車販店は、この区分に当てはまることが多くなります。
いくら補助されるのか(計算例)
| ケース | 対象経費 | 補助率 | 補助額の目安 | 自己負担 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模事業者が通常枠で整備システムを導入 | 90万円 | 2/3 | 60万円 | 30万円 |
| 小規模事業者が通常枠で基幹システムを導入 | 300万円 | 2/3 | 200万円 | 100万円 |
| 小規模事業者がインボイス枠でソフト導入 | 50万円 | 4/5 | 40万円 | 10万円 |
| 中小企業(従業員10名の整備会社)が通常枠 | 200万円 | 1/2 | 100万円 | 100万円 |
※上限額の範囲内で、実際の補助額は審査により確定します。あくまで補助率から計算した目安です。
同じ90万円のシステムでも、補助率が1/2か2/3かで自己負担は45万円と30万円で15万円変わります。「小規模事業者に当たるかどうか」は必ず確認してください。
開業したばかりでも申請できる?
創業1年目でも申請そのものは可能です。ただし実務上は、事業の実在と規模を証明する書類が出せるかが壁になります。個人事業主の場合、直近の確定申告書(控え)が主な証明書類になるため、まだ一度も確定申告をしていない段階だと提出できる書類が限られます。
また、審査では「導入によって労働生産性がどれだけ上がるか」を計画として示します。過去の実績値がない場合、計画の根拠づくりに工夫が必要です。開業直後で申請を検討している場合は、次の確定申告を終えてから申請する方がスムーズなこともあります。どちらが良いかはケースバイケースなので、支援事業者に相談してください。
個人事業主に必要な書類
- 身分証明書(運転免許証など。有効期限内のもの)
- 直近の確定申告書(税務署の受付印または電子申告の受信通知があるもの)
- 納税証明書(所得税。税務署が発行する「その1」または「その2」)
- GビズIDプライムのアカウント
- SECURITY ACTIONの宣言
e-Taxで確定申告している場合、受付印がありません。受信通知(メール詳細)まで含めて提出する必要があります。「申告書のPDFだけ出して不備になった」というのは非常によくあるミスです。
一人親方・小規模工場での活用例
従業員が少ない事業者ほど、事務作業に取られる時間の重みは大きくなります。実際にご相談の多い活用例を挙げます。
- 手書き伝票からの脱却:自動車整備ソフトで受付・見積・請求・入金消込までを一本化し、夜の事務作業をなくす
- 車検の入庫促進:顧客・車両情報を整備システムで管理し、車検満了日の案内を自動で出せるようにする
- インボイス・電子帳簿保存法対応:適格請求書の発行と電子データ保存に対応した会計・請求システムに切り替える
- 在庫と仕入の見える化:部品仕入と在庫を記録し、粗利が見える状態にする
「システムは大きい会社が入れるもの」という時代は終わりつつあります。人が少ない事業者こそ、1人分の事務作業を機械に肩代わりさせる効果が大きいのが実感です。
個人事業主がつまずきやすい5つのポイント
1. 確定申告書の「受付印」問題
紙で提出した申告書なら税務署の収受日付印、e-Taxなら受信通知が必要です。会計ソフトから出力しただけのPDFは証明になりません。過去分をなくしてしまった場合は、税務署で「申告書等情報取得サービス」や閲覧の手続きを検討することになります。時間がかかるので早めに動いてください。
2. 納税証明書の種類を間違える
個人事業主は所得税の納税証明書が必要です。「その1(納付すべき税額等)」なのか「その2(所得金額)」なのかは公募要領で指定されています。指定と違う種類を取ると出し直しになり、発行手数料も日数も無駄になります。
3. 屋号と個人名の使い分け
GビズID、申請書、見積書、振込口座——これらの名義がバラバラだと確認に手間取ります。「◯◯モータース」と「山田太郎」のどちらで統一するかを最初に決め、書類全体で揃えてください。
4. 事業用と生活用の支出が混ざっている
補助対象経費の支払いは、事業用の口座から振り込むのが原則です。生活用の口座から払ってしまうと、事業の経費であることの証明が難しくなります。導入費用の支払いに使う口座を事前に決めておきましょう。
5. 「自分だけで全部やろう」として詰まる
個人事業主の場合、経営者が現場にも出ているため、書類作業に割ける時間が極端に少なくなります。IT導入支援事業者と分担できる部分は分担するのが現実的です。事業計画の数値づくりや必要書類のチェックリスト作成は、支援事業者と一緒に進められます。
法人成りを考えている場合の注意
「近いうちに法人化するけれど、補助金は今のうちに個人で取っておきたい」というご相談があります。ここは慎重な検討が必要です。
- 補助事業の実施主体は申請時の事業者です。個人で交付決定を受けたなら、事業を実施し、実績報告と効果報告を行うのも個人事業主としての立場になります。
- 補助事業の期間中に事業形態が変わる場合、事務局への届出や承認が必要になることがあります。
- 無届けで実施主体が変わると、交付取消の対象になり得ます。
法人化の予定がある場合は、申請前に事務局または支援事業者へ相談してください。タイミングを少しずらすだけで済むこともあります。
従業員数の数え方
小規模事業者に該当するかは「常時使用する従業員」の数で判断します。ここも誤解が多い部分です。
| 区分 | 従業員数に含めるか |
|---|---|
| 事業主本人 | 含めない |
| 役員(法人の場合) | 原則として含めない |
| 正社員 | 含める |
| パート・アルバイト | 労働時間や雇用形態により判断が分かれる |
| 季節的・臨時の雇用 | 「常時使用する」に当たらない場合がある |
整備工場では、繁忙期だけ手伝いに来てもらうケースもあります。境界線上にある場合は自己判断せず、公募要領の定義を確認したうえで支援事業者に相談してください。補助率が1/2か2/3かを左右する重要な判定です。
導入したいツールの探し方は対象ITツールの記事、申請の準備はGビズIDとSECURITY ACTIONの記事をご覧ください。
よくある質問
- Q. 個人事業主はいくらまでもらえますか?
- A. 枠の上限は法人と同じです。通常枠なら最大450万円、インボイス枠なら最大350万円。違うのは補助率で、小規模事業者に該当すれば通常枠で2/3以内になります。
- Q. 従業員がいない一人事業でも対象ですか?
- A. 対象です。従業員数の基準は「上限」なので、0人でも問題ありません。
- Q. 副業でやっている事業でも申請できますか?
- A. 確定申告をしていて、日本国内で継続的に事業を営んでいる実態があれば検討の余地があります。ただし事業実態の確認が求められるため、事前に支援事業者へ相談してください。
- Q. パソコンだけ買いたいのですが申請できますか?
- A. ハードウェア単体では申請できません。インボイス枠(インボイス対応類型)で、対象となるソフトウェアとセットで導入する場合に限りハードウェアも対象になります。詳しくはパソコン・タブレットの記事をご覧ください。
- Q. 家族だけで経営している工場も小規模事業者になりますか?
- A. 常時使用する従業員の数で判断します。事業主本人や、一定の条件を満たす家族従業員は従業員数に含めない扱いがあるため、判定に迷う場合は個別にご確認ください。
まとめ
- 個人事業主も対象。法人格の有無は要件ではない。
- 小規模事業者(商業・サービス業は従業員5人以下、その他20人以下)なら補助率が2/3以内・4/5以内に優遇される。
- 従業員0人の一人事業でも申請できる。
- 開業直後でも申請自体は可能だが、確定申告書などの証明書類が壁になる。
- e-Tax申告の場合は受信通知まで提出する。よくある不備。
- 屋号と個人名、口座名義は書類全体で統一する。
- 法人成りの予定がある場合は、申請前に必ず相談する。
人数の少ない事業者ほど、事務作業を減らす効果は大きくなります。「うちの規模で使えるのか」からお気軽にご相談ください。
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